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トップページ > 代表長尾が語る > 経営の道標 2018年版

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経営の道標

new 働き方改革のマイナス面から目を背けるな

 ここ数年、議論されて来た「働き方改革」がいよいよこの4月から法的にもスタートする。過重労働を減らし、働きやすくなり、働く人誰もが公平な処遇を得て、100年という長い人生を楽しめるようになるという、働き方改革のプラス面が実現するのは誠に結構なことだ。「休みも増えて労働時間も減るなんていいことずくめじゃないか」と感じている人も多いだろう。
 だが、もちろん、企業経営者としてはそのプラス面を実現する企業経営(経営改革)を行なわなければならないわけで、「今の売上や利益を維持しながら、休みも増やして労働時間も減らせるなら、とっくにやってるよ」と言いたくても我慢しなければならない。現状かなり深刻な人手不足にも直面しており、労働条件の改善はその対策としてもやらなければならないし、ヘタなことを言って「ブラック企業」などと批判されて人に辞められたらますます困るから、「働き方改革なんて出来るわけないだろ」などと反論出来ない状況だ。
 働き方改革に誰も異論を唱えられない、否定的なことを言うとバッシングされるという空気の中で、働き方改革のマイナス面、負の影響についての議論があまりになされていないのではないかという点を危惧している。

何事にもプラスとマイナスがある

 働き方改革がどんなに素晴らしいものであっても、物事には一長一短、裏と表、プラスがあればマイナスもあるというのが、当たり前の常識であって、孫子の兵法でも、「智者の慮は、必ず利害を雑う」と教えてくれている。智将は必ず物事の利と害の両面を考えるものだと。
 私も働き方改革にケチをつけたいわけではないし、バッシングされて「ブラックだ」などと批判もされたくないので、誤解のないようにしていただきたいが、働き方改革をうまく進めるためにも、そのプラス面だけを見るのではなく、そのマイナス面も直視し、決して目を背けていてはならないと指摘したい。
 まず、「早く帰れ」「休みをとれ」と言うだけで、残業が減り、休みが取れるなら、そもそも仕事に無駄が多かったということであり、帰りづらい、休みづらい空気があったというだけの話であって、それだけでは生産性が上がったと喜ぶことは出来ない。やはり生産性を上げるためには、何らかの改善を施さねばならず、「それが簡単に出来るくらいならとっくにやっているよ」という話なるだろう。
 無駄をとるだけでなく、実質的な改善を実現するには、やはり時間と場所の制約を超えて仕事が出来るようにするテレワークを考えることになる。テレワークのためには、ペーパーレス化も必要となり、当然ITツールの活用が必須だから、ITベンダーからはバラ色のテレワーク像が提示されるが、ここにも当然、利ばかりではなく害があることを忘れてはならない。
 ちなみに、私もテレワークを実現するITツール「NI Collabo」を提供しているし、テレワークは特に育児や介護の問題、特に介護離職問題への対策として必ず必要とされるものと確信しているのだが、だからと言ってマイナス面に触れないわけにはいかない。テレワークを推進しているような人はきっと知っているだろうが、テレワーク先進国とされる米国でもテレワーク(リモートワーク)に対して否定的な意見もあって、米国のYahooやIBMで在宅勤務の禁止というルールが出来たりしたことは結構話題にもなった。要するに、ITツールが発達して便利にはなっても、実際に会って生で話をするのとは違う、ということだ。普段顔も合わさず、働く時間がズレていてもITの力で協働は出来るが、毎日顔を合わせて同じ空間で仕事をしている人と比べれば疎遠になるのは当然だ。
 MITの組織学習センターをピーター・センゲらと共同で創設したダニエル・キムは、「成功の循環モデル」で、結果や行動や思考の質を問う前に、組織内の「関係の質」を良くしなければならないと指摘した。人間関係を良くするためには、接触回数が多い方が良いに決まっている。これを「単純接触効果(ザイアンスの法則)」と言う。心理学者のロバート・ザイアンスが提唱したものだが、心理学者に言われなくても分かるだろうと思う。こうした問題から目を背けたままで、テレワーク、働き方改革を進めていては短期的にはうまく行ってもいずれ問題が露呈するだろう。

人生100年時代だけに二刀流も良いが

 また、働き方改革で、副業や兼業を解禁すべしという議論がある。人生100年時代ということを踏まえれば、定年後の人生も長くて、セカンドキャリアも必要になるから、本業だけに縛り付けるべきではないという考え方には賛成だ。だが、それを本業となる会社側、経営側が推進すべきことなのだろうか? 私ははなはだ疑問に思う。
 もちろん、メジャーに行っても二刀流が許された大谷翔平選手のような体格とセンスを持ち合わせているような人はどんどん副業でも兼業でもやって、思う存分その才能を発揮すれば良いと思う。だが、その大谷翔平選手も同じ野球という業界内で、投手と打者という2職種をやっているに過ぎない。決して野球とサッカーをやっているわけではない。投手としての経験が打者としても生きることがあるだろうし、その逆もあるだろう。
 これまで会社員としてしか仕事をしていなかった人が、急に片手間の副業で活躍出来るくらいなら、すでにその道で独立して仕事をしているフリーランスの人はもっと活躍してバンバン稼いでいるのではないか。そのフリーランスでも稼げるのは一部の人だけだと言うのに、片手間の副業でそう簡単に活躍できるとは考えにくい。
 この副業、兼業で、付加価値の低い(賃金も大してもらえない)仕事をやっていては、勤務間インターバルをとって休養をしっかりとろうという施策に反するし、非正規のパート程度の時給であれば、本業で残業した方が割増もされてよっぽど時給が高いことになるだろう。
 そして、有給休暇の取得も義務化され、今まで休みを取れなかった(取らなかった)人も休ませなければならない。そうなると、仕事が属人化されて、「その人でなければできない」という状態ではまずいので、他の人でも代替できる体制を作らなければならない。そもそも人数の多い大手企業では当り前のことだろうが、中堅・中小そして零細規模の会社では、「その仕事を担当している人は一人しかいません」という属人仕事のオンパレードだ。そもそも複数人で担当するほどの仕事量がないのだから、それを複数人で対応するとなると必ず人の無駄が出る。その余分な人員を採用するコストはともかく、採用したくても来てくれない場合はどうすれば良いのか、という中小の現場には切実な問題がある。
 それよりも私が問題視したいのは、「君にしかできないのだから」と言って任される仕事だから意気に感じて頑張れるものを、「他の人でもできるからいつでも休んでいいよ」と言われてしまってはモチベーションが下がってしまうのではないかということだ。この話を逆手にとって、過重労働を正当化させてはいけないが、代替の利かない仕事、人材であるからこそ価値があるのであって、いつでも替えが利く人材に高い処遇をするとは思えない。

相関関係と因果関係を混同してはならない

 もう一つ、働き方改革の議論の中で気になる点として、「労働時間が減って早く帰るようになったら創造性(付加価値)が高まる」かのような雑な議論が平気でなされていることを指摘したい。多くの場合、総労働時間が減って、有給の取得率も高い大手企業が例として取り上げられ、その企業が売上や利益を伸ばしているから、労働時間を減らして休日を増やせば、社員の創造性が高まって会社としての付加価値も高くなるのだとされる・・・。こうした議論は、相関関係と因果関係をごちゃまぜにしている。
 大企業になるほど付加価値の高い業務をしていて、優秀な社員も多く、IT化投資なども充分出来て、時間外の急ぎ仕事などは下請けに投げるか断ることが出来るような企業だから、労働時間を減らして休日を増やしても業績を伸ばせたかもしれないのに、労働時間を減らしたら付加価値が上がったかのように論ずるのは因果が逆になっている。
 大手企業は労働生産性が高く、中小規模だと労働生産性が低いというのは相関関係であって、労働生産性が高い業務をしているから大手になったのであって、労働生産性の低い仕事に甘んじているから中小規模に留まっているに過ぎない。もちろん、大手になって規模の経済が働くことで生産性が高まったとも言えるし、中小規模だから生産性の上昇には限界があるとも言える。
 付加価値の高い仕事をしている企業は労働時間が短くても休みが多くても業績を伸ばしているかもしれないが、だからと言って、労働時間を短縮して休みを増やせば付加価値の高い仕事が出来るようになるわけではない。
 もちろん、「今日はNO残業だぞ」「何時までに終えるように」と期限を明確にしてやることで、集中力が増し、作業効率が高まったりすることはあるだろう。だがそれは、あくまでも単純な作業などの場合であって、知的な創造性を必要とするような場合には時間の制限がプラスに働くとは限らない。むしろ、時間で区切るようなことをすると、「他者から統制されている」と感じて内発的動機付けが阻害される。ミハイ・チクセントミハイは、「一つの活動に深く没入しているので他の何ものも問題とならなくなる状態、その経験それ自体が非常に楽しいので、純粋にそれをするということのために多くの時間や労力を費やすような状態」を「フロー」と呼び、時間を忘れて没入する、忘我状態が創造性を発揮するためには有効であると指摘している。
 時間を区切って効率的に仕事をするというのは、もちろん大切なことではあるが、作業レベルの仕事はそれでこなせても創造性を発揮し付加価値の高い仕事を生み出す知識労働、頭脳労働には必ずしも有効ではなく、場合によっては阻害することもあると知っておかなければならない。
 言い出せばキリがないのでこれくらいにしておきたいが、働き方改革にはプラスもあるが、マイナスもある。一言で言えば、組織に遠心力をもたらす。したがって、働き方改革を成功させるためには、その遠心力に対応する求心力が必要になるのだ。長くなるので、その解決方法については、別の機会に譲り、セミナー等でお伝えして行くが、ここでは、働き方改革を成功させるためにはそのマイナス面から目を背けず、しっかりと議論すべきであることを指摘しておきたい。

2019年3月

2019年 己亥(つちのと い)

 抑え整えようとする力と飛び出し突き進もうとする力の相剋。一見好調に見えて、一方では不安や不満が高まり変革、改革を促す。但し、猪突猛進の勇み足には注意。吹き出そうとする力をどう制御し正しく導くかが問われる。
 今年は波乱の年、変革の年になりそうだ。株価も乱高下、元号も変わる。働き方改革が起き、消費税も上がる。米中関係もドル円もEUも中東も怪しい。火をつけるのは、トランプか中国経済かBrexitか・・・火種はたくさんあり、いつ着火するか、いつ破裂するか分からない。個人的には日本開催のラグビーワールドカップで、日本がまた大番狂わせを演じて波乱を起こしてくれることを期待したいところだが・・・。

 さて、今年、そうした動きをどう抑え整理するかだが、変化の激しい時だからこそ、目先の事象に対する対症療法ではなく、10年後20年後を見据えて、今何をすべきかを考えたい。景気は廻り、バブルはやがて弾けてまた膨らむ。干支もまた同じ。変化が激しいからと言って、その変化に一喜一憂せず、焦って手を出さず、将来に向けて冷静に手を打ちたい。
 2030年でも2040年でも良いが、自社の将来ビジョンを描いてみよう。自社の未来の「見える化」だ。もし、それが描けないとしたら、目の前の変化に翻弄され、流されて、やがてはDisruptされる運命にあると言って良いだろう。時代の流れに身を任せているだけで乗り切れる時代環境ではなくなっていることを改めて考えてみるべきだろう。株価がどうだとか景気がどうだとか外部環境を論じる前に自社の根幹となる事業構造、ビジネスモデル、戦略戦術を見直そう。
 その際に、ITやAIを活用した戦略やビジネスモデルを考えるのは当然だが、如何に限界費用をゼロに近づけるかという視点を盛り込みたい。限界費用とは要するに変動費のこと。この限界費用ゼロで攻撃を仕掛けてくるのが、Digital Disruptorだから、その破壊攻撃に立ち向かうためには、こちらも限界費用ゼロの武器を持っていなければならない。その武器も、金さえ払えば簡単に手に入るようなものなら、資金力のあるDigital Disruptorはさらに武装してくるわけだから、ある程度時間をかけてはじめて構築できるものである必要がある。そのためにも10年後20年後に向けたビジョンが必要になるのだ。
 Digital Disruptorに業界ごと破壊されてしまう脅威を考えれば、目先の株価の暴落や景気変動など大した脅威ではないので、イザという時に備える災害対策のように、Digital Disruptionへの備えを己亥の今年進めておきたい。変化を波と捉えれば、その波に逆らうか、その波に飲まれてしまうか、その波に乗るかを選択できる。大波に逆らうことは出来ないし、飲まれてしまえばお終いだ。となればその波に乗るしかない。変化の波にサーフィンのように乗って楽しめるかどうか、それが魅力のあるビジョン作りの要諦だ。楽しめる将来ビジョンを作ろう。

2019年1月

 

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