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経営の道標

new 働き方改革の前に業務改革

 「働き方改革」なる言葉が、安倍政権の「一億総活躍社会の実現」という課題設定から出て来たはずなのに、いつの間にか労働時間短縮運動に歪曲され、すり替えられているように感じる。恐らく電通の新入社員が過労自殺した事件によってそういう流れが出来上がったのだと思われるし、人の命まで奪ったのだからということで異論を唱えにくい空気もあるのだろう。政治の世界は人気投票にも勝たないといけないし、資金繰りの心配もないから、国民が喜びそうなことを言っていれば良いのかもしれないが、民間の企業経営は曖昧な空気に左右されるわけにはいかない。企業経営者は、「働き方改革」も大いに結構だが、そのためにもまず「業務改革」を進めなければならない。業務が先で、働き方が後だ。順番を間違うと結局「働き方改革」も実現できない。年度も替わるところで、改めて考えてみて欲しい。
 そもそも、「一億総活躍社会の実現」が必要なのは、人口が減るからだ。1億3千万人弱の人口が1億程度まで減少することは確実なので、その1億人全員が活躍して、すなわち生産性を上げて、3割増しの成果を出すことで、1億3千万人分のGDPを維持しましょうねということだろう。これが基本。
 だが、急に3割も生産性を上げろと言われても無理な人も多い。そこで、これまで職場から離れていた女性や高齢者、場合によっては障がい者にも働いてもらって、総人口は減っても労働人口はあまり減らないようにしたい。だから、一億総活躍だ。全員が働いて頑張ろうということだ。
 しかし、職場から離れてしまっている人に戻れと言っても戻れない障壁がある。それが労働時間の長さや勤務シフトの硬直性、それに伴う通勤の過酷さ等である。ここの障壁を取り除く、もしくは低くするために「働き方改革」が求められた。いきなりフルタイムで必要なら残業もしてくださいと言っても難しいだろうから、「時間は短くてもいいですよ」「必要なら休んでもいいですよ」「場合によっては在宅でもOKです」「時間が短くなる分、副業や兼業も認めましょう」「これなら、子育て中でも、体力が落ちて来ても、病気で通院などが必要でも、介護しながらでも働けるのではないですか?」という提案が「働き方改革」であったはず。
 ここまでは良い。賛成だ。人口減少は日本の確実な未来であり、それによる人材不足はすでに防波堤の氾濫危険水位を超えている。同時に、人口減少によるマーケット縮小で競争は厳しくなり、ネット通販の物流競争が起こったり、小売店が早く開け遅く閉め、元旦も営業するような過剰なサービスが求められ、すき家の深夜営業、三越伊勢丹の元旦営業、ヤマト運輸の通販対応など決壊する事態に至っている箇所もある。すでに女性活用や外国人雇用などにも踏み込んでいる企業ですら決壊してしまうのだから、「働き方改革」は急務だ。やるしかない。
 と思っていたら、電通事件もあって、「一億総活躍」のはずが「一億総時短」みたいな話が主流になってきて、今や、働く時間を減らせば自ずと時間当たりの生産性は上がるという勝手な理屈までがまことしやかに語られるようになっている。ダラダラ仕事をしていた人が、仕事のENDを意識して集中すれば、結果として生産性が上がることになるだろうが、元々きちんと仕事をしていた人の時間を短くしてもそれだけでは生産性は上がらずアウトプットが減るだけだ。これは、100メートル走をタイムも計らずに走っていたところに、ストップウォッチを持ち込んでタイムを計ったら走るのが速くなると主張するのに等しい。チンタラ走っていた選手は多少速く走るだろうが、速く走るためには、タイムを計るだけでなく走り方を改善する必要があるのは当然のことである。
 そして、より根本的な問題は、人口が減り労働人口も減るから働き方に多様性、柔軟性を持たせて労働参加率を上げようとしていたのに、元々働いていた人も含めて働く時間を減らしてしまっては、労働人口の減少に対する対策に反することになるということだ。労働力が減る分をみんなで頑張って補おうという話と、働き過ぎると参加できない人がいるから働く時間を減らすことも認めようという話がごちゃ混ぜになってしまっているのだ。
 このごちゃ混ぜの矛盾を一番露呈させているのが、プレミアムフライデーなる取り組みだ。月末の金曜日には午後3時に仕事を終えて早く帰れば消費が喚起されるという話だったのに、「一億総時短」の波に飲まれて時間短縮の取り組みのようになってしまった。時間短縮を奨励するなら、小売店も飲食店もサービス店も一斉に午後3時には閉店させてあげないといけないはずだが、もちろんそうはなっていない。一体誰にとってのプレミアムフライデーなのか・・・。小売飲食サービスなど、そもそも一番人手不足で困っていて生産性が低いと問題になっている人たちに、余計に忙しい月末の金曜日をプレゼントしたいのか? それなら月末の金曜日はヒマなホワイトカラーを職場から送り込むので、しっかり残業してしっかり稼いでくださいと言うべきであって、長時間労働を助長する(すなわち労働人口の減少を補う一億総活躍の)取り組みであることを明示しなければならない。経産省が人口減のマーケット縮小対策で消費喚起をしているものであって、厚労省の推進する「働き方改革」とは関係ないのだと。
 「働き方改革」は大いに結構だ。私もダラダラ長時間仕事をした人が残業代を稼ぎ、サッサと仕事を片付けて早く帰った人には残業代がないというのは納得がいかない。そもそも時間で仕事を計るという考えが合わなくなっている職場が増えているのだと思うが、それを書き出すとさらに長くなるのでここでは止めておく。
 ここで言いたいのは、まず労働人口が減り人手不足も深刻になっている日本では、より多くの人がより多く働く必要があるという現状を認め、そのための処方箋を整理すべきだと言うことだ。まずより多くの人が働くためには、女性、高齢者、障がい者、育児中、介護中でも働きやすいように、働き方の柔軟性を高める。これが本来の「働き方改革」の趣旨であるはず。(厚労省の考えを直接聞いたわけではないが・・・。)
 次に、より多く働くためには、二通りあって、時間を長くするか、時間当たりのアウトプットを多くするかが選択できる。だが、電通事件など過労死問題もあるから前者の時間を長くするという方法はとらず、後者の生産性を上げるという方法をとるのだと明確にする。これで、「働き方の柔軟性を高める」と「仕事の生産性を高める」という二つの課題に取り組めば良いことが分かる。
 その二つに、企業経営者として取り組むとしたら、やるべきことは「業務改革」である。現状の業務のまま、仕事の進め方のままで、「働き方を柔軟にせよ」「生産性を高めよ」と要求しても、個々の社員さんに余計に過度な要求をするだけで無理がある。人もいないのだから、ITやAIも活用し業務のやり方を変えなければならない。
 「業務改革」が先で、それができて初めて「働き方改革」ができる。
 ではその「業務改革」はどう進めれば良いかというと、この改革のテーマは「働き方の柔軟性を高める」と「仕事の生産性を高める」だから、ITを活用した分業と情報共有によって場所と時間の制約を取っ払ってやれば良い。要は、短時間でもOK、在宅でもサテライトでもモバイルでもOK、誰がやってもOKとして、定型かつ反復する業務はITに載せ、将来的にはここにAIを載せて多少考えることも人間がやらなくて良くしてやれば良い。
 「簡単そうに言うけれどもそれをどう実現するかが難しいだろう」とご懸念の方もご安心を。そのための道具はNIコンサルティングがご用意している。分業と情報共有(顧客情報の共有と業務情報の共有が必須)を進め、場所と時間の制約を取っ払うには、グループウェアのNI Collaboでスケジュール共有とコミュニケーションを確保して、ワークフロー機能をフル活用し、Sales Force Assistantで顧客情報と業務情報を共有しつつ、AI秘書も使えば良い。これにかかるコスト以上に業務改善でコストダウンを実現し、生産性を上げると同時に、テレワークなどの「働き方改革」も実現して、育児や介護などへの対応も可能に出来る。
 これが出来て、無駄な残業も減り、働き方も多様になったら、それに対応可能な勤怠管理システムを導入すれば良いだろう。これは弊社ではなくお好きなシステムをどうぞ。その際、くれぐれも業務改革をせずに勤怠管理をするようなことのないように。それでは、ストップウォッチでタイムを計ったら走るのが速くなるという笑い話になってしまう。民間企業は、タイムを計るよりも先に、速く走れるようにならなければならない。働く時間を減らす前に、生産性を上げなければならない。この順番を間違わないようにしていただきたい。「働き方改革」の前に「業務改革」だ。

2017年3月

2017年 丁酉(ひのと とり)

 今年、2017年は、丁酉(ひのと とり)。さらに伸びようとする力と極限に達した成熟との相剋。燃え盛る火が金を溶かしてしまう波乱と矛盾を暗示する。就任早々、いや就任前から旋風を巻き起こすトランプ大統領がやはり波乱要因か。トランプ大統領の赤いネクタイが燃える炎に見えて来た・・・。
 いよいよ成立かと思えたTPPから突然の離脱。選挙戦での爆弾発言も、実際に大統領になればおとなしくなるだろうと思われたが、有言実行。酉にちなんだわけではないだろうが、ツイッターによる直接メッセージは、既成の秩序を崩壊させそうな勢いだ。
 そう思っていたら、他国のことなどかまっていられない程の不満を抱えているはずの米国で、NY株が史上初のダウ平均2万ドル超え。世界中のバブルが大きくなり極限に達しつつあることは間違いないだろう。そこに自国優先主義という火が点火された時、世界はどうなるだろうか。America 1STを許すならRussia1STもChina1STも否定できないだろう。
 さて、そこでどうするか。
 政治の出番だろうが、TPPもまとめられない日本には期待できないとすると、やはり何が起こってもいいように備えを厚くしておくしかない。ツイートするだけでメキシコ工場をいきなり否定された自動車業界のように想定外の波乱がいつ起こるか分からない。  たとえば、メキシコで計画していた自動車生産を米国で生産しなければならない状況に置かれたとしたら、さて、どうするか。米国の人件費はメキシコの6倍ほどだと言う。
 完全自動化ラインを作って人件費の差を考えなくても良いようにするしかない。そんなことをしたらトランプ大統領から「アメリカ人を雇え」とツイート攻撃されるかもしれないが、アメリカから出て行きませんから許してくださいと謝るしかない。任期のある大統領の言いなりになって、ゴーイング・コンサーンである企業が潰れてしまっては元も子もない。
 日本でも、「働き方改革」と言いながら、国が民間企業の給与や労働時間や休日数などに口出しして来て、政治の出る幕を間違えているのではないかと思うが、「給与を上げろ、残業はさせるな、休みは増やせ」と言うなら、IT、AI、アウトソーシングなど何でも使って、人がいなくても良い経営を目指すしかない。雇用条件は法律で縛れても、雇用判断は縛れまい。より少ない人数でより大きな付加価値を上げる「省人数経営」にシフトだ。
 自動化、IT化、AI化で人を省いて、今まで以上の付加価値を生み出すにはどうするか、真剣に考えなければならない。今年は、IoT分野で新しい製品やサービスが出て来てコストも下がるだろうから、自社の製品やサービスを提供するプロセスにIoTを組み込めないか考えてみるべきだろう。わざわざ高いコストをかけて人間がやるほどではない仕事が結構あるはずだ。ピンチをチャンスに変え、成長発展を目指すなら、「省人数」で人への依存度が減った分、成長スピードを上げることが可能となる。
 日本国内では、コスト以前に頭数として人の確保が難しくなるかもしれない。そうなれば国が何と言おうと関係なく、残業手当も休日も必要ないITやAIで賄うしかないだろう。もし、それは無理だと諦めるなら、そもそも事業を縮小して単なる「少人数経営」にするしかない。そして、世界中が火を噴いてせっかく蓄えた金を溶かしてしまい、立ち行かなくなる前に事業譲渡するか清算してしまうべきだろう。
 今年は、トランプ大統領のツイッターをフォローして、危機感をダイレクトに感じながら、その逆境をチャンスに変えてみてはどうだろか。ダイレクトメッセージングの力を実感できるかもしれないし、多少は英語の勉強にもなるかもしれない。私も早速有言実行でフォローしてみた。
 今年は読みにくい一年だ。「申酉騒ぐ」の格言通り、今年も変動の激しい年になるだろう。

2017年1月

 

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